薬に頼らない認知症の予防策

石黒です。

今日は、認知症についてお話ししたいと思います。

認知症の原因は?

認知症の主な原因はアルツハイマー病で、これは脳の神経細胞が慢性的に変性する疾患です。

脳内にベータアミロイドという異常なタンパク質が蓄積することがアルツハイマー病の特徴の一つとして知られています。この異常タンパク質の蓄積が炎症を引き起こし、それがアルツハイマー病を促進すると考えられています。現在、ベータアミロイドを対象とした治療薬の開発が進められていますが、認知症の増加を食い止めるには至っておらず、認知症の治療は依然として難しい状況です。

しかしながら、ベータアミロイドの蓄積は、認知症を発症していない人にも見られることがあります。

これにより、この異常タンパク質が認知症発症の原因としてどれほど影響しているのか、再検討する必要があるかもしれません。

さらに、健康的な生活習慣を送ることが、高齢者の認知機能の向上に関連しているという疫学的データもあります。これは、認知症の予防において、生活習慣の見直しが重要であることを示唆しています。

研究結果「異常タンパク質が認知症発症にどの程度影響するか?」

不健康な生活習慣と脳内の異常タンパク質が認知症発症にどの程度影響するかを検討した研究が、2024年に「JAMA Neurology」に報告されました。この研究では、亡くなった586人の脳データを基に、生活習慣や認知機能検査のデータ、及び脳解剖の結果から、認知症に影響を与える要因を分析しました。健康的なライフスタイルの指標には、喫煙習慣、運動習慣、飲酒量、MIND食の遵守が含まれ、これらを基に点数をつけて分析しました。

この研究結果によると、健康的な生活習慣を送っている人は、ベータアミロイドの量が少なく、認知機能が高い状態を維持していました。しかし、認知症の発症において、ベータアミロイドの量は認知症発症の12%程度にしか影響せず、残りの88%は生活習慣が認知症発症に影響していることが示されました。これは、認知症対策において、異常タンパク質の除去よりも健康的な生活習慣を送ることがより大きな影響を与えることを意味します。

効果的な認知症を予防する対策とは?

僕たちは、より健康的な生活習慣を目指してシフトしていくべきだと思います。

特に、食事と運動は、脳の炎症を抑え、認知機能に良い影響を与える抗酸化作用や抗炎症作用を持っています。1980年代後半からは、アルツハイマー病の人でも、脳内にβアミロイドがたくさん溜まっていても、認知症を発症しない人がいることがわかっています。これらの人たちは、認知予備能が高いため、アルツハイマー病のような変化があっても、認知症を発症せずに済んでいます。

認知予備能とは、脳の予備能力が高ければ、脳の様々な機能を駆使して認知症を発症せずに済むというものです。脳の機能を高め、新しい考えを引き起こしたり、人との関わりや社会との繋がりを通じて、人生を豊かにすることが重要です。

健康的なライフスタイルは、脳に栄養と酸素を供給し続けるために不可欠です。

質の高い食事、適切な運動、人との関わり合い、血糖値のコントロール、十分な睡眠、日光浴でのビタミンDの生成、人との交流は、脳を刺激し認知予備能を高めることで、認知症対策につながります。

※この記事は、下記の動画を要約したものです。
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